ボランティアでの街路樹管理活動、どこまでやる?
2021.07.23 コラム
#緑地管理 #高木剪定 #機械除草 #安全管理 #剪定技術 #低木刈込 #手刈り除草
STAGE編集部 人と緑・花をつなぐコーディネーター 地域緑花技術普及協会
緑地管理における技術と安全管理
先日、街路樹ボランティアの活動に関するニュースを目にしました。
「発足1年で精力的に うるま市の道路清掃ボランティア」
RBC YouTubeチャンネル(2021/07/15)RBC NEWS
ニュースは、刈り払い機を使っての植樹枡の除草や高木の剪定などのボランティア活動を好意的に紹介していました。 市民協同はこれからの道路緑化に欠かせない取り組みなのですが、今回紹介された活動内容は高木剪定や機械除草。 これらの活動は安全の面や技術的な面で問題をはらんでいます。 地域社会のためにと善意で活動されていて素晴らしいことなのですが、活動されている方々はこうした問題点を認識されておられないと思います。 少なくともこのボランティア活動を支援する自治体は全く分かっていないはず。 (分かっているなら止めていないとおかしい!) そこで今回、STAGE編集部は、緑地管理のボランティア活動について注意喚起の記事を執筆することにしました。
高木剪定や機械除草は危険を伴う作業
高木の剪定や機械除草は危険を伴う作業です。 造園業の労働災害で一番多く発生し、死亡事故も多いのは高所からの墜落事故。 金属の刃を高速回転させる刈り払い機も扱い方を間違えばとても危険です。 除草作業中の事故も頻繁に起きていて、死亡を含む重大事故の例もたくさんあります。 道路上でこうした作業をするときは、車両や歩行者の通行がありますからさらに危険が伴います。 通行する車両や歩行者、作業者自身の身の安全を確保するため、十分な安全管理体制を敷いた作業を行わなくてはなりません。 結果的に事故やトラブルが発生してしまえば、それが業務であろうがボランティアであろうが、作業者は責任を問われてしまいます。
高所での剪定作業
ニュース映像から切り取った作業の内容について批評してみたいと思います。 まずは下の画像の左側。これはボランティア団体によるのこぎりでの高木剪定作業の風景です。 作業者の装備、使用する脚立の種類と乗り方、ロープの吊り方などすべて不適切で危険です。 通りかかる車両や歩行者に目配りできる作業体制にもなっておらず、安全管理面で問題だらけの作業が映ってしまっています。
機械除草作業
続いては、刈り払い機での除草作業の風景を切り取りました。 作業者がお互い近距離で除草作業。 プロの方なら画像を見ているだけで怖くなると思います。 どんなに注意していたとしても、石が跳ねたり、キックバック(刃が硬い障害物に弾かれて大きく跳ね上がってしまうこと)を起こしたりすることがあります。 重大事故を招きかねない、本当に無謀で危険な行為です。 また、飛散防止ネットなどで飛散物が車道・歩道へ飛び出るのを防止する措置もしていません。 石が跳ねれば歩行者や通行車両に当たることもあるでしょう。
車道上での作業
最後の画像は、車道で熊手を使っての清掃作業の風景。 車道に背を向けて作業に没頭されています。 作業者はどうしても作業に気を取られますので通行車両の動きに気が付きにくい状況になってしまいます。 車両通行量も少なくはない道路のようですので、単独での車道上の作業は大変危険! できることなら交通誘導に専念する作業補助者が欲しいところです。
プロが剪定している意味
安全の面のほかに、もう一つ大切なことは、技術的な面です。 言うまでもなく、樹木の剪定には知識と技術が必要です。 それが街路樹の剪定であれば、道路管理上求められるプラスアルファの約束事があります。 不適切な剪定は、街路樹を痛めたり、景観を損ねたりする原因となります。 大げさに思われるかもしれませんが、街路樹という社会資本を劣化させて効能を低下させる憎むべき行為なのです! そんなことにならないように、専門的な知識と技術のある業者が責任をもって行っているのが本来の街路樹剪定業務。 ですから、市民ボランティアの活動でできる内容にはおのずと限界があるはずなのです。
ボランティア活動は低木の刈込と手刈りの除草まで
このように安全の面や技術的な面を考えてみると、市民ボランティアで現実的に実施できる街路樹の剪定と除草作業の内容は、専門家の立会いと十分な安全管理があることを大前提としても、低木の刈込みと手刈りの除草までだと思います。 今回、ボランティア活動として実施されていた道路上の高木剪定や機械除草は、市民ボランティア活動で行う範疇を逸脱しているのは明らかです。 自治体も、市民活動を管轄する部局が緑地管理業務に疎いのは当たり前だと思います。 その代わりに、街路樹や公園などの緑地を管理する部局と連携して、市民ボランティアがする緑地管理活動の内容の妥当性を判断できる体制になっていなければいけないはず。 残念ながら、今回はそのような体制が取られていなかったようで、結果的に市民ボランティアのやる気のままに「精力的」な活動を暴走させている状態になってしまっています。 深刻な事態が起こる前に、自治体には早く過ちに気付いてもらい、現状を是正する措置を取ってもらいたいと思います。 また、他の自治体でもし類似の問題があるようでしたら、今回の事案を参考にしていただければと思います。
「発足1年で精力的に うるま市の道路清掃ボランティア」
RBC YouTubeチャンネル(2021/07/15)RBC NEWS
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