落葉を有効活用:落葉マルチ【シリーズ・知っておきたい緑花の基礎知識】
2021.10.20 コラム
#管理 #マルチング #土壌微生物 #樹勢回復 #雑草 #お茶殻
豊田幸夫 STAGEプリンシパル・プロフェッショナル・パートナー 技術士(建設環境)、樹木医
一般社団法人 地域緑花技術普及協会(STAGE)では、緑と花を通じて健康な生活を送るための情報や、緑・花を元気に育てるために役立つ情報を公開しています。 「知っておきたい緑花の基礎知識」は、STAGEプロフェッショナル・パートナー豊田幸夫氏が作成された、趣味で庭造りを楽しむ方から植栽管理のプロフェッショナルまで幅広く参考にしていただける技術資料です。 このコラムでは、「知っておきたい緑花の基礎知識」を皆様にさらに分かりやすくお伝えできるようにSTAGE編集部がインタビュー形式で再構成したものです。
― 今日は「落葉マルチ」について教えてください。 「マルチング」は植栽地の土壌の表層をマルチング材で覆うことですね。 一般的には、土壌の乾燥防止や保温、防草、降雨による土壌の硬化、流出や泥はねの防止などが目的だと思いますが、マルチング材として落葉を使う意義は何にありますか。 豊田幸夫さん(以下:豊田): 落葉の特徴を確認しながら説明しましょう。 落葉はチッソやミネラルが豊富で、酵母菌や乳酸菌、放線菌、糸状菌などの土壌微生物が生息しています。 自然界では、土壌が植物に栄養を供給し、落葉や落枝が小生物や微生物による分解を通して土壌に還元され、それがまた植物に利用されるという物質循環が働いています。 表層の落葉は水分があれば土壌微生物により発酵・分解されていきますから、土壌へ栄養分やミネラルを供給する供給源になるのです。
― 落葉を原料とする腐葉土や堆肥が土壌改良材として利用されているのも植物の生育を良好にする効果があるからですね。 豊田: そうです。落葉は、同じく自然素材のウッドチップと比べても腐朽・分解が早いので、植物に速やかに栄養を供給することができますね。 落葉が分解される過程で量も減っていきますから、一般的なゴミ処理が不要なのも利点です。 有機物の有効利用、廃棄物削減につながります。 土壌微生物の側から見てみると落葉は餌です。 豊富な餌があるだけでなく、落葉は表土を保温・保湿して紫外線からも守ってくれますから、「落葉マルチ」によって土壌微生物の種類や量が豊かになり活動も活性化します。 土壌微生物が活性化すると土壌の団粒構造化が促進されて浸透能の高い植栽基盤ができます。 一般の緑地でも、落葉をきれいに取り除くことをせずに、マルチングとして残していくことにより、土壌環境が良好なものとなります。 できるだけ自然界の物質循環を働くようにすることにより、土壌の団粒化や植物の健全な育成が図られ、廃棄物の削減とともに維持管理費の軽減にもつながるのです。 ― 「落葉マルチ」をする際の注意点はありますか? 豊田: まず、落葉は土壌にすきこむのではなく、表層に使用することです。 樹木の根元に厚く敷くと樹木の根元に穿孔する害虫の被害が分かりにくくなります。 とくにサクラやモミジなどはカミキリムシなどの「穿孔性害虫」の被害を受けやすいので、根本は薄く敷きましょう。 厚く敷くと風で飛ばされやすくもなります。 マルチングをしたときは直後に風で飛ばされるようなことがないように灌水して安定させるといいでしょう。
― 落葉以外でマルチングにお勧めの自然素材があれば教えてください。 豊田: 除草した雑草でも構いません。雑草を使用する場合は、種の付く前に刈り取ったものを使用しましょう。 お茶殻、紅茶、コーヒーの出がらしなどもマルチング材として使えます。 ― 身近な資源を有効利用して廃棄物の削減にもつながりますね。
(編集部より) 落葉は落葉集積箱(*)に集めておくだけでも周辺の植物を元気にする効果が見込めます。 ぜひ落葉を有効活用してみてください。
*(編集部注)落葉集積箱【シリーズ・知っておきたい緑花の基礎知識】
関連参考図書 ・現代農業2017年12月号 特集「落ち葉&せん定枝 : ラクに集めて、どっさりまく」
・「新・ぐうたら農法のすすめ―省エネ有機農業実践論」西村和雄、人類文化社(2001)269pp
・「ぐうたら農法」西村和雄、学研プラス(2018)146pp
・「雑草と楽しむ庭づくり」ひさちガーデンサービス、築地書房(2011)187pp
豊田幸夫(とよだ ゆきお) STAGEプリンシパル・プロフェッショナル・パートナー 技術士(建設環境)、樹木医 元鹿島建設(株)・ランドスケープデザイン部・兼務・技術研究所、(株)ランドスケープデザイン設計部 技術部長。 屋上緑化・屋上庭園、ヒーリングガーデン、エディブルガーデンの計画・設計を専門分野とする。現在は樹木医・環境造園家として活躍中。
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