

一般社団法人 地域緑花技術普及協会(STAGE)
広報部
樹木の点検・診断はどんな仕事?
当協会では、寺社、団地管理組合、企業、個人など、様々なご依頼主様からご依頼をいただいて「樹木の点検・診断」や安全確保・治療措置を行っています。
倒木・落枝による事故を予防するために「樹木の点検・診断」が行われていることは認知されてきていますが、その仕事の内容についてご存じの方は少ないようです。
当協会にお問い合わせをいただくときも、どんなことをするのか、「樹木の点検・診断」の内容についてご質問を頂戴することの方が一般的です。
倒木・落枝による事故は怖いが、よく分からない点検にコストをかけることはできない、ごもっともです。
そこで、今回のコラムでは「樹木の点検・診断」がどんな仕事なのかについてご説明します。
①点検・診断の内容
②樹勢の評価
③木の弱点
④倒木・落枝リスクの評価
⑤フォローアップ診断
⑥樹木台帳オンラインデータベースの構築
⑦安全確保・治療措置
①点検・診断の内容
「樹木の点検・診断」では、倒木・落枝による事故が発生しないよう、樹種、幹周、木の活力(樹勢)の評価、倒木・落枝の原因となる弱点の評価、木が育っている空間の評価、想定される被害の大きさなどについて記録します。
人の命・身体・財産に関わることですので、点検・診断には正確性が求められます。
一方、作業効率を高めてコストがかかりすぎないようにすることも大切です。
このため、「樹木の点検・診断」には、点検者の専門的な知識や豊富な経験はもちろん、洗練されたメソッドとシステムが不可欠となるなのです。
当協会の「樹木の点検・診断」では、倒木リスク研究の第一人者が開発した独自の点検・診断メソッドとシステムを用い、経験豊富な樹木医(*)がペアで点検・診断業務を行っています。
*樹木医:街路樹や天然記念物など文化財樹木等の保全・診断・治療をおこなうための資格です。
樹木医認定制度はもともと林野庁の事業として開始され、現在は一般財団法人日本緑化センターが事業主体となっています。

②樹勢の評価
「樹木の点検・診断」では、まず、木から少し離れたところから枝葉が茂っている部分(樹冠)全体を見て、木の活力(樹勢)を診ます。
樹勢は、幹や枝の枯れ、枝葉の密度、葉の大きさや色、新しい枝の伸びなどを見て総合的に判断します。


注意しなければならないのは、樹勢が良くても倒木・落枝の可能性が高い木があるということです。
木の元気さである樹勢と倒木・落枝の可能性の評価は基準が異なり、どちらも専門的な判断が必要となります。
当協会の「樹木の点検・診断」では、どちらも専門的な知識と豊富な経験をもっている樹木医が判断しています。
③木の弱点
次に、倒木・落枝の原因となる弱点を診て評価します。
まずは外観から目で診て弱点を発見するのが基本です。
弱点やその兆候が現れている部分は、樹木点検用の道具も使って弱点の大きさや範囲を確認していきます。








④倒木・落枝リスクの評価
「樹木の点検・診断」では、木の弱点の有無や大きさ、木の生育する空間における事故発生の可能性、事故が発生した場合の被害の大きさをそれぞれ数値で評価します。
活力や木の弱点などについては文章で所見を記録します。


樹木点検の結果を総合し、倒木・落枝事故のリスクを評価します。
当協会では、弱点などの各評点を組み合わせたマトリクス表を用いてリスクを判定しています。
リスク判定により倒木・落枝の可能性の高いことが判明した木を施主様にご報告し、リスクの大きさや内容に応じ、木一本ごとの安全確保・治療措置を提案します。

リスクの評価や内容に応じた措置を取ることで、倒木・落枝事故は未然に防ぐことができます。
また、専門家による点検・診断結果を記録として残すことは、適切な日常管理を行っていることを証明する資料となります。
自然災害によって万が一倒木・落枝事故が発生してしまっても、木の所有者・管理者にとって不可抗力により責任がないことを主張する強力な証拠となるのです。
⑤フォローアップ診断
「樹木の点検・診断」では、木ごとにリスクの評価や内容に応じた次回の点検・診断(「フォローアップ診断」)のスケジュールを提案します。
「フォローアップ診断」では前回のカルテを用い、記録された弱点の変化を中心に診るため、より効率的(つまり安価)で精度の高い点検・診断が可能です。

⑥樹木台帳オンラインデータベースの構築
さらに効果的・効率的な樹木管理をするために、当協会では「樹木台帳オンラインデータベース」を整備することをお勧めしています。
「樹木台帳オンラインデータベース」は、過去の点検・診断結果や日常管理などの毎木の記録・情報をオンラインのサーバー上に保存するシステムです。
ID・パスワードを入力すれば、どこでも誰でも情報の呼び出しが可能なため、所有者・管理者と植木屋さんなどの現場での情報共有や管理者が変わった場合の情報の引継ぎなどでとても役立ちます。

「樹木台帳オンラインデータベース」を構築する際は、毎木にQRコード付きのIDタグを設置しますので、現地でスマートフォンを使ってQRコードを読み取れば毎木の情報にアクセスできるようになります。
もちろん、現地でその木の管理内容を記録したり、撮った写真をアップロードすることが可能です。
樹木図鑑として一般市民へ公開して活用していただいている例などもあり、工夫次第で様々な使い方ができます。



⑦安全確保・治療措置
安全確保・治療措置を実施する場合、当協会では現在管理されている植木屋さんと連携して確実な施工を支援します。
ご要望に応じ、当協会でも安全確保・治療措置を実施することも可能です。


特別な樹木診断用機器を使い、倒木・落枝の可能性についてさらに詳細に検討することも可能です。
いわれのある貴重木や御神木など、倒木・落枝の可能性があっても、できるだけ状態良く保護していくことを希望される場合にはお勧めします。

②樹勢の評価で元気がないと判定された木については、ご要望に応じて樹勢回復措置を実施いたします。
下の画像は、元気がない原因が土壌が締め固まってしまったことにあると分かり、木が生育している基盤である土を改良しているところです。
圧縮空気を噴射する特殊な機材を用いて土を掘り返していきますので、木の根を痛めることがありません。
土を掘り上げた後は土を改良する資材を混入して埋め戻します。資材や配合・方法などは当協会の独自メソッドです。


…土壌改良資材や配合・方法など、当協会の独自メソッドで木を元気に!
おわりに
このコラムでは「樹木の点検・診断」がどんな仕事なのか、下記の内容についてまとめてご説明しました。
①点検・診断の内容
②樹勢の評価
③木の弱点
④倒木・落枝リスクの評価
⑤フォローアップ診断
⑥樹木台帳オンラインデータベースの構築
⑦安全確保・治療措置
当協会では、寺社の樹木、企業の公開空地の樹木、私有地の樹木、保護樹木や公園木などの公共の樹木などの「樹木の点検・診断」や安全確保・治療措置を実施しています。
所有・管理されている樹木や樹林に倒木事故等のご不安がありましたらお気軽にお問い合わせください。

一般社団法人 地域緑花技術普及協会(STAGE)
広報部
関連記事
一般社団法人 地域緑花技術普及協会(STAGE)では、市民と専門家が手を取り合い、地域の緑や花を豊かに、美しく、健全に、守り育むための情報を公開しています。