自然の光と風を感じながらミーティングやオフィスワーク:アウトドア・オフィス(ガーデン・オフィス)【シリーズ・知っておきたい緑花の基礎知識】
2021.09.02 コラム
#計画 #設計 #クールルーフ #健康 #コミュニティ #働き方改革
豊田幸夫 STAGEプリンシパル・プロフェッショナル・パートナー 技術士(建設環境)、樹木医
一般社団法人 地域緑花技術普及協会(STAGE)では、緑と花を通じて健康な生活を送るための情報や、緑・花を元気に育てるために役立つ情報を公開しています。 「知っておきたい緑花の基礎知識」は、STAGEプロフェッショナル・パートナー豊田幸夫氏が作成された、趣味で庭造りを楽しむ方から植栽管理のプロフェッショナルまで幅広く参考にしていただける技術資料です。 このコラムでは、「知っておきたい緑花の基礎知識」を皆様にさらに分かりやすくお伝えできるようにSTAGE編集部がインタビュー形式で再構成したものです。
― 今日はアウトドア・オフィスについて詳しく教えてください。 屋外で自然の光と風を感じながらミーティングやオフィスワークができる場所のことだと思いますが? 豊田幸夫さん(以下:豊田): そうです。照明や空調を必要とせず、自然・緑と親しむことができる空間で、オフィスワーカーのリフレッシュとコミュニティの形成、そして健康を考慮した場でもあります。 屋上にアウトドア・オフィスを作れば、「クールルーフ」*となり、建物の温度上昇を防止したり、室内の冷暖房のエネルギー消費を抑制したりする効果も期待できます。
*(編集部注)クールルーフ:屋根や屋上の温度を低くする技術。その技術を利用した屋根や屋上のこと。屋上緑化はクールルーフの典型例といえる。
― アウトドア・オフィスが注目されるようになった背景を教えてください。 豊田: 深刻な環境問題に対して、我が国では2020年までにCO2排出量を25%削減することを目指しています(技術資料作成当時)。* さらに、経済産業省は「2030年までに、新築建築物全体でZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)化を実現する」というビジョンを提言しています。** このような背景から、設備や建築だけではなく、建物の配置計画やランドスケープ計画の適正化が求められるようになりました。 さらに、自然との共生、健康・コミュニティの形成、働き方改革、災害への備え・構えなどの課題に対応した計画・技術が必要とされる時代になったこともアウトドア・オフィスが生まれた背景となっています。
*(編集部注)CO2排出量を25%削減:COP21で採択されたパリ協定などを踏まえ、日本では「地球温暖化対策計画」が閣議決定された(平成28年5月13日)。 同計画は、日本の地球温暖化対策を総合的に推進するための計画で、2030年度に2013年度比で26%削減するとの中期目標を掲げている。 **(編集部注)ZEB:Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称。快適な室内環境を実現しながら、消費エネルギーの収支をプラスマイナスゼロにすることを目指した建物。
― コロナ禍では三密を避けられる仕事場としても注目されたかもしれませんね! ― アウトドア・オフィスを作るにはどんな施設が必要でしょうか。 豊田: 何がなくてはいけないということはありませんが、日除けとベンチやテーブル、寝転んだりヨガや気功などの運動をしたりできる芝生や芝生の縁台、四季折々に自然に親しめる植栽、リラックス効果のあるハーブや五感を刺激する植物の植栽など… さらに、業務を終えた後にパーティーなどもできるように照明とコンセント、案内板、健康器具などもあると良いですね。
― アウトドア・オフィス、屋内のオフィスと使い分ければ仕事の能率化が図れそうですね。 自宅でのテレワークでもベランダや庭をアウトドア・オフィスに改造して第二の仕事場にする…なんて、とっても夢があります! ― アウトドア・オフィスのデザインで気を付けることはありますか。 豊田: 日除けとしてパーゴラ(棚)を設置する場合は、のれん状のルーバーで風を受け流す構造にすると強風にも安心です。 布製で非常に軽くて耐候性にも優れたルーバーもあるのでお勧めです。緑化コンテナなどを重しにすれば既存の床にそのまま設置することも可能です。 ベンチは備品の収納ができるようなものが良いですね。 ソフト面では、アウトドア・オフィスを利用する人たちが植物などの維持管理に参加したり援助したりできる仕組みを作れると良いですね。 使いやすくて効果の高いアウトドア・オフィスの空間を維持できますし、社員の交流にもなります。
豊田幸夫(とよだ ゆきお) STAGEプリンシパル・プロフェッショナル・パートナー 技術士(建設環境)、樹木医 元鹿島建設(株)・ランドスケープデザイン部・兼務・技術研究所、(株)ランドスケープデザイン設計部 技術部長。 屋上緑化・屋上庭園、ヒーリングガーデン、エディブルガーデンの計画・設計を専門分野とする。現在は樹木医・環境造園家として活躍中。