地域コミュニティの核となる環境共生型緑地~エコグリーン・コミュニティパーク【シリーズ・知っておきたい緑花の基礎知識】
2021.09.03 コラム

#計画 #設計 #環境共生 #健康 #コミュニティ #防災・減災

豊田幸夫 STAGEプリンシパル・プロフェッショナル・パートナー 技術士(建設環境)、樹木医
一般社団法人 地域緑花技術普及協会(STAGE)では、緑と花を通じて健康な生活を送るための情報や、緑・花を元気に育てるために役立つ情報を公開しています。 「知っておきたい緑花の基礎知識」は、STAGEプロフェッショナル・パートナー豊田幸夫氏が作成された、趣味で庭造りを楽しむ方から植栽管理のプロフェッショナルまで幅広く参考にしていただける技術資料です。 このコラムでは、「知っておきたい緑花の基礎知識」を皆様にさらに分かりやすくお伝えできるようにSTAGE編集部がインタビュー形式で再構成したものです。
― 今日は「エコグリーン・コミュニティパーク」について教えてください。 聞きなれない用語です。 豊田幸夫さん(以下:豊田): 地域コミュニティの核となる、環境共生型の防災緑地のことです。 ― 環境共生型の防災緑地、この言葉も難しいですが、意味としては、地域の自然資源や人的資源、文化を活用する、環境にかかる負荷を減らす、という目的と、火災時の延焼防止や、地震後の避難場所、水害時の遊水池など、防災・減災機能の発揮を目的として整備された緑地ということですよね。 具体的にはどのような施設が置かれるのでしょうか。 豊田: 生物多様性に配慮した緑と多目的芝生広場のある公園が中心になって、「コミュニティ・レストラン」のあるコミュニティ・ハウスなどの施設が併設されていることが第一の条件です。 多目的芝生広場は、子供たちや高齢者が運動できる場所ですが、緊急時には避難場所にもなります。




― 「コミュニティ・レストラン」は、「食」を核にしたコミュニティ支援を目的とした施設のことですね。
*(編集部注)コミュニティ・レストラン:元金沢大学大学院教授の世古一穂氏が提唱し推進した考え。安全安心な食の提供、障害者の働く場づくり、不登校の子どもたちの出口づくり、高齢者の会食の場づくり、循環型社会の拠点作りなど、地域のニーズに合致したテーマをもち、食の提供は「地産地消」「旬産旬食」「エコ・クッキング」が基本となる。厳密には、NPOにより運営されるべきとされる。
豊田: そうです。その「コミュニティ・レストラン」が入るコミュニティ・ハウスは、たとえば孤独になりがちな高齢者や近隣住民の交流の場となることが期待できるでしょう。 コミュニティ・ハウスには、レストランのほかにも、託児所、高齢者福祉施設の設置も考えられます。 ― 他にも「エコグリーン・コミュニティパーク」に求められる施設があれば教えてください。 豊田: 植栽は、食べられる植物などの「エディブル・グリーン」があると良いですね。 他には雨水貯留・雨水利用を考慮した「レイン・ビオトープ」。 雨水の貯留・浸透への配慮に関しては、雨水を浸透させる「グリーン・トレンチ」を敷設したり「落葉マルチ」をしたりすることもお勧めできます。


― 難しいテクニカルタームの意味についてはそれぞれの用語のリンク先で個別に確認するとして、地域の課題や環境問題を解決するためのソフトな技術と施設の設置というハードな技術がパッケージ化されているのが「エコグリーン・コミュニティパーク」だということが分かりました。 たとえば、豊島区の南池袋公園は「エコグリーン・コミュニティパーク」と呼べそうです。* 立川の「GREEN SPRINGS」なども商売っ気は多いとはいえ「エコグリーン・コミュニティパーク」的と言えるかもしれませんね。**
*(編集部注)南池袋公園:東京都豊島区南池袋にある豊島区立の都市公園。2016年にリニューアルオープンした。リニューアル前は、老朽化が進みホームレスが住み着く、暗い、汚い、怖い公園であった。リニューアル後はイメージが一変、芝生広場が広がる明るくきれいな公園となり、連日、ファミリーやカップルで賑わっている。公園内には、生産者と消費者の「食を介するつながりの場」をテーマとするカフェレストランが営業し、公園利用のルール作りは、商店会・町会・区の代表者、学識経験者などで構成される「南池袋公園をよくする会」で行う。

**(編集部注)立川GREEN SPRINGS東京都立川市緑町にある大規模複合施設。元国有地だった土地に2020年にオープン。「心身ともに健康的で心地よい、人間らしい暮らし」の実現をテーマとし、多機能ホール「TACHIKAWA STAGE GARDEN」、ホテル「SORANO HOTEL」、オフィス、ショッピングエリア、緑地・水辺と10,000m²の広場で構成される。オフィス、店舗の軒天井などには、杉を中心とする多摩産材が使用される。コミュニティFM放送局、複合文化施設「PLAY!」、企業支援施設、保育園など、ソーシャルビジネス関連のショップも営業している。


豊田幸夫(とよだ ゆきお) STAGEプリンシパル・プロフェッショナル・パートナー 技術士(建設環境)、樹木医 元鹿島建設(株)・ランドスケープデザイン部・兼務・技術研究所、(株)ランドスケープデザイン設計部 技術部長。 屋上緑化・屋上庭園、ヒーリングガーデン、エディブルガーデンの計画・設計を専門分野とする。 現在は樹木医・環境造園家として活躍中。
STAGEではエコグリーン・コミュニティパークの計画・設計もお手伝いしています。
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