健康と環境に配慮した街路樹のある道~エコグリーンロードとグリーンベンチ【シリーズ・知っておきたい緑花の基礎知識】
2021.09.05 コラム

#計画 #設計 #環境共生 #健康 #樹冠最大化 #グリーン・トレンチ

豊田幸夫

STAGEプリンシパル・プロフェッショナル・パートナー
技術士(建設環境)、樹木医
一般社団法人 地域緑花技術普及協会(STAGE)では、緑と花を通じて健康な生活を送るための情報や、緑・花を元気に育てるために役立つ情報を公開しています。

「知っておきたい緑花の基礎知識」は、STAGEプロフェッショナル・パートナー豊田幸夫氏が作成された、趣味で庭造りを楽しむ方から植栽管理のプロフェッショナルまで幅広く参考にしていただける技術資料です。

このコラムでは、「知っておきたい緑花の基礎知識」を皆様にさらに分かりやすくお伝えできるようにSTAGE編集部がインタビュー形式で再構成したものです。

― 今日は「エコグリーンロード」と「グリーンベンチ」について教えてください。

豊田幸夫さん(以下:豊田): 「エコグリーンロード」は、一言でいえば健康と環境に配慮した街路樹のある道です。

― 健康と環境に配慮した街路樹とは?

豊田: 樹冠を最大化・適正化して大きな緑陰を作る街路樹です。
樹木が健全で大きくなれば、都市環境は潤いのあるものになります。

― 「樹冠の最大化」と言っても、大きければ大きいほど良いというわけではないでしょうから、その空間に支障なく収まる限度での最大化ということですね。
最適化と言ってもいいかもしれません。

豊田: そうですね。たとえばこの画像。
緑陰のある自然樹形の街路樹で、「樹冠の最大化」の好例です。
「樹冠の最大化」の好例
豊田: 上の画像に対して、次の画像は悪い例。
「樹冠の最大化」が望まれる街路樹です。
「樹冠の最大化」が望まれる街路樹
「樹冠の最大化」が望まれる街路樹
― なるほど。良く分かります。ただ、街を歩いていると悪い例の方が多いように思えます…。
樹冠を最大化するためにはどんな課題があるのでしょうか。

豊田: まずは剪定です。
小さく切り詰める剪定を繰り返していては「樹冠の最大化」はできませんし、樹木が弱っていきます。
自然な樹形を活かす適切な剪定管理をしなくてはいけません。

次に植栽基盤(*)です。
樹木が健全に大きく成長するためには、根に十分な酸素と水を供給できる、物理性、化学性、生物性の良好な土壌がなくてはいけません。

次の画像のような踏み固められている硬い植栽基盤では街路樹の健全な生育は望めません。
*(編集部注)植栽基盤:植物が正常に生育できるような状態になっている地盤(日本造園建設業協会)
踏み固められている硬い植栽基盤
踏み固められている硬い植栽基盤
豊田: 樹木が健全に大きく成長するためには、植栽基盤も最大化・連続化し、「グリーン・トレンチ」にする必要があります。

― 「グリーン・トレンチ」、通気・透水管を敷設した植栽基盤のことですね。

豊田: そうです。通気・透水管によって街路樹の植栽基盤が雨水浸透施設になります。雨水の流出が抑えられ、都市の下水処理の負担が軽減されるんです。

同時に、樹木の根に酸素と水が供給されるので樹木の樹勢が回復しますし、土壌の物理性、化学性、生物性の改善にもつながります。
エコグリーンロードの断面模式図
― 断面模式図は分かりやすいですね。

図には「グリーンベンチ」が描かれています。「グリーンベンチ」も今回のテーマでした。

豊田: 「グリーンベンチ」は木陰の傍に配置されたベンチのことです。
高齢者などが休憩できるこのようなベンチも「エコグリーンロード」の構成要素になります。

健康には歩くことが大事で、多くの人が意識して歩くようになってきています。
ですが、高齢者にとっては途中で休憩することのできる場所が必要ですし、夏場に歩くときは熱中症にならないような木陰がある緑の環境と休憩できるベンチがあることが大切になるんです。

― 「グリーンベンチ」には色々な素材が使われていそうですね。

豊田: ええ。木材、金属、プラスチック、石材、「GRC」(*)などがよく使われています。
最後に「グリーンベンチ」の例をいくつか画像で挙げておくので参考にしてみてください。
*(編集部注)GRC:ガラス繊維補強セメント(Glass Fiber Reinforced Cement)。セメントをガラス繊維で補強した複合材料。
街路ますに設置されているベンチ
植込みに設置されているベンチ
街路樹に設置されているベンチ
立上り壁に設置されているベンチ
石のベンチ
金属のベンチ

豊田幸夫(とよだ ゆきお)

STAGEプリンシパル・プロフェッショナル・パートナー
技術士(建設環境)、樹木医

元鹿島建設(株)・ランドスケープデザイン部・兼務・技術研究所、(株)ランドスケープデザイン設計部 技術部長。
屋上緑化・屋上庭園、ヒーリングガーデン、エディブルガーデンの計画・設計を専門分野とする。現在は樹木医・環境造園家として活躍中。

STAGEではエコグリーンロードとグリーンベンチの計画・設計もお手伝いしています。全国どこでもご対応できますので、どうぞお気軽にご相談ください。法人だけでなく、個人のお客様からのご依頼も承ります。

一般社団法人 地域緑花技術普及協会

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