【街路樹事故】ケヤキ倒伏 乗用車2台が下敷き(東京都調布市)
2021.08.10 ブログ
STAGE 編集部 人と緑・花をつなぐコーディネーター 地域緑花技術普及協会
8月9日午後1時50分ごろ、国道20号(甲州街道)、東京都調布市の下石原交差点付近で、街路樹のケヤキの倒木事故が起きた。 ケヤキの高さは約15m。車道側へ車線をすべて塞ぐ形で倒れ、反対車線を走行中の車2台が下敷きになった。 このうちの1台に乗っていた親子が首の痛みを訴えて病院に運ばれたという。 現場は倒木の撤去が完了するまで約3時間にわたり通行止めになった。 事故の起きた時間は、台風9号から変わった温帯低気圧の影響により東京都各地で強風が吹いていたという(江戸川区では午後2時半ごろに最大瞬間風速25・5mを記録)。
国道20号のケヤキ並木は、1964年の東京オリンピックの際に整備されたもので、植栽から50年以上が経過している。 街路樹の問題に詳しい、一般社団法人地域緑花技術普及協会の細野哲央氏(農学博士、樹木医)によれば、植え桝が小さくてもともと根が十分に張れない環境なうえに、過去の道路工事などで根が傷められていたことが今回の事故の間接的な原因だという。 細野氏は、今回の事故に関して以下のコメントを寄せている。 「倒れたケヤキは根が非常に浅くて根株が発達しておらず、大きな地上部を支えられるだけの強い根が張れていたようにも見えませんでした。 そのようなケヤキが民有地側からの強風を受けて、歩道側の根元の土壌に亀裂が入り根が浮き上がった。あとは地上部の重さだけで簡単にひっくり返ったはずです。 隣接する民有地には、以前はケヤキよりも高いマンションが建っていたようです。もともと民有地側から強風が吹きつけることのない環境で生育していたケヤキが、マンションが撤去されたことで民有地側からの強風をまともに受けるようになったという環境の変化も事故の一因になったかもしれません。 事故現場付近に同じように倒れた木もなく、被害にあわれた方としては自然災害としては受け入れ難いと想像します。国道20号を管理する道路管理者の責任問題は避けられないでしょう。 事故が起きた道路はもともと交通量が多いうえ、休日の昼過ぎという時間帯を考えると、さらに重大な死傷事故が起きていたとしても不思議ではない事案でした。 根株腐朽の兆候のほか、事故発生前に樹木の外観から今回の倒木事故の危険を予見することができなかったかを検証することが必要です。」
細野哲央 一般社団法人 地域緑花技術普及協会 代表理事 樹木医 博士(農学) 国立大学法人 千葉大学 客員研究員 樹木のリスクマネジメント、樹木医倫理の分野で日本の第一人者として知られる。植栽や庭園の施工・維持管理技術、緑化樹木の生産・管理技術、緑の生理・心理的機能、樹木の成長特性などにも造詣が深い。
事故現場付近の様子(2021年)
事故現場付近の様子(2017年)民有地側にはマンションが建っている
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