【街路樹事故】チハラザクラ倒伏 乗用車を直撃(熊本県熊本市)
2022.05.12 ブログ
STAGE 編集部

人と緑・花をつなぐコーディネーター
 地域緑花技術普及協会

4月27日の朝、熊本市中央区渡鹿の市道(産業道路)で、樹高15m、幹周180㎝のチハラザクラの街路樹が倒れ、赤信号で停車中の乗用車を直撃しました。

直撃を受けた車はボンネットが損傷。

この事故でけが人は出ませんでしたが、倒木で4車線の道路は3車線がふさがったため、倒木が撤去されるまで約3時間半にわたって交通規制がかかりました。
一時は4キロを超える渋滞が発生したということです。


熊本市では、2017年6月に、市が管理する東区下南部の県道(供合線)で道路脇の立木が倒れて走行中の車に直撃して男性が亡くなる事故が発生しています。
市と遺族はこの事故の責任を巡り現在も係争中です。

熊本市で倒木 けが人なし

朝日新聞デジタル2022年4月28日


倒れた街路樹(チハラザクラ)


街路樹を管理する市によれば、サクラは根元から折れていて、風や雨が原因で倒れた可能性があるといいます。

前日からの24時間雨量は100㎜を超えていました。

週5回行っている車上からの道路パトロールでは異常は確認されていなかったということです。

事故を受けて、市は周辺およそ400mの区間にあるサクラ32本の緊急点検を実施しました。

熊本市が街路樹の倒木事故受け緊急点検

テレビ熊本2022年4月28日


街路樹の事故に詳しい細野哲央氏(農学博士、樹木医)のコメント

「報道されている画像や映像からは倒れた根元が映されていませんでしたので、根株の腐朽や空洞があったかどうかは確認できません。

しかし、市の担当者の言う「根元が折れた」という表現を素直に受け取れば、根株の腐朽・空洞が原因で座屈して倒木したと考えられます。

根元から倒れたくらいの意味合いで表現されたのであれば、別の原因も考えられます。

グーグルマップを見ると、桜の植えられている植え枡が狭いことが分かりますので、根がしっかりと張れていなかったかもしれません。
倒れたサクラは枝葉も多く、車道側に重心が極端に偏っている樹形であったことも分かります。

前日からの24時間雨量は100㎜を超えていたということで、これは土砂災害の注意が必要なほどの大雨ではないですが、雨量としてはかなり多い方といえるでしょう。

この雨で植え桝内の土壌がゆるみ、枝葉についている多量の雨滴で地上部も重くなります。

もともと重心は車道側にありますから、根が張れていないサクラが雨滴をまとった地上部の重さで根鉢が回転して倒れたのかもしれません。

そうであれば、いわゆる「根返り」倒木だったということになります。

また、車上からの道路パトロールでは異常は確認されていなかったということですが、一般的に道路パトロールは道路交通に支障のある異常がないかを確認するための巡回にすぎません。

したがって、既に倒れている樹木、折れて落下している枝、倒れかけた樹木などは発見できても、倒木の予兆まで発見することはまず無理です。

樹木の安全性を確認するためには事故後の緊急点検で行ったような徒歩でのパトロールが必要です。

しかし、倒木事故のリスクを減らすという観点からは、車上からも樹木の異常をある程度判断できるような日常の点検方法を検討する必要もあると思います。

また、植え枡の狭さや重心が極端に偏った樹形も事故の一因になっていると思われますので、点検だけではなく、街路樹の植栽環境と樹形管理の見直しも求められます。
細野哲央
細野哲央
 一般社団法人地域緑花技術普及協会 代表理事
 樹木医 博士(農学) 国立大学法人 千葉大学 客員研究員

 樹木のリスクマネジメント、樹木医倫理の分野で日本の第一人者として知られる。植栽や庭園の施工・維持管理技術、緑化樹木の生産・管理技術、緑の生理・心理的機能、樹木の成長特性などにも造詣が深い。

追記

緊急点検の結果、2本のサクラの木の幹に空洞が見つかりました。

突風や強風が吹けば倒れる恐れがあるということで、近日中に伐採される予定ということです。

熊本市中央区の通称、産業道路で新たに倒木の恐れ

テレビ熊本2022年5月11日


追記

市は5月12日の夜間に、街路樹の危険木2本を伐採しました。

倒木の恐れ 2本伐採 熊本市「産業道路」の街路樹 4月の事故受け市が全域を点検「梅雨前に安全確保」

熊本日日新聞2022年05月13日


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