【樹木事故】ケヤキの大枝折れ車9台が下敷き(熊本県運転免許センター)
2022.08.01 ブログ
STAGE 編集部

人と緑・花をつなぐコーディネーター
 地域緑花技術普及協会

27日午後1時、熊本県運転免許センター(菊池郡菊陽町大字辛川)の駐車場に植えられている樹木の大枝が折れて落下し、敷地内を走行中の車1台と停車中の車8台が下敷きになりました。
この事故による負傷者はいませんでした。
(報道では倒木事故とされていましたが、この事案では枝折れとするのが正確ですので訂正しています。)

「めりめりと音が…」樹木倒れ車が下敷き 菊陽町の熊本県運転免許センター(熊本日日新聞 2022年7月27日 19:40)

車9台が下敷きに…運転免許センターで倒木【熊本】(熊本県民テレビ 2022年7月27日 20:30配信)


事故の原因となった樹木は高さ約25m、幹周190㎝のケヤキ。
2002年1月のセンター開設時に植栽されたものだといいます。
このケヤキの大枝が、高さ約3m、幹から分岐していた位置で折れました。

県警は、折れた部分に腐食は見当たらなかったとしており、雨と突風が事故の原因とみています。
当時、近隣の町では最大瞬間風速15.4mを観測していました。

県警はまた、同様の事故が起こらないよう、台風シーズンまでに周囲の木も調査すると話しています。
樹木の事故と点検に詳しい一般社団法人地域緑花技術普及協会の細野哲央氏(農学博士、樹木医)は、この事故は天災とは考えにくく、樹木管理者である運転免許センターの責任が問われるべき事案だと言います。

細野氏は、今回の事故に関して以下のコメントを寄せています。

「報道の動画や画像を見ると、折れた大枝には青い葉がついている枝があるものの、樹木本体の葉は全て赤くなり枯れていました。
つまり、ほぼ枯死していた状態です。

県警は、折れた部分に「腐食」(腐朽)は見当たらなかった(したがって雨や突風が原因)としていますが、ほぼ枯死している状態の木は地上部の支持力に問題が起きていることが多いですね。

また、枯死材と健全材がある場合は、その境界付近で折れるケースも良くあります。
枯死材と健全材は含水率が異なります。含水率が変化する部分には局所的に応力が増大(応力集中)するために破壊の起点となりやすいからです。

どちらにしても、この木は倒伏や材の折損が起こりやすい危険な状態であったということができます。

枯死している状態は、腐朽よりも素人目でも判断しやすい分、これを見過ごしていた管理には重大な問題があったと指摘できるでしょう。

県警が言うように事故の直接の原因は雨と突風といえるかもしれませんが、それだけであれば他の木にも被害が出ていなくてはおかしな話です。

駐車場内には同じような高さのケヤキが生育していますがそれらの被害は特に報じられていません。
ほぼ枯死していたという、このケヤキが持っていた弱点が事故発生の要因となったことは明らかです。

専門家の調査を経ず、警察が早々に事故原因を雨と突風と見立てる発表をすることはミスリードを招きます。
被害にあわれた方の救済や今後の同様の事故の発生を防止する観点から望ましくありません。」

運転免許センター駐車場の植栽。多くのケヤキの大木が確認できる。

細野氏は、事故の原因となったケヤキが危険な木になった原因についても指摘し、樹木点検の重要性を訴えました。

「枯れた枝にはまだ葉がついているものがあり、これは春に葉を開いたもののそのまま枯れてしまったことを示しています。
また、動画や画像から、木の根元から、大枝の分岐位置よりも高いところまで幹に大きな(見たところ周長に対して1/3以上)樹皮枯死が確認できます。

これらの状態から、生立木の腐朽菌であるナラタケ類の被害を受けていた可能性が高いと思います。

樹皮枯死はずいぶん前から起こっていたはずで、それが進行・拡大してきてここまで大きくなったものですし、葉も事故が起こる前から周辺のケヤキと比べて小さく縮れるなどのシグナルがあったはずです。

専門家が点検する機会があれば今回のような事故は防げたと思います。」

細野哲央
細野哲央
 一般社団法人地域緑花技術普及協会 代表理事
 樹木医 博士(農学) 国立大学法人 千葉大学 客員研究員

 樹木のリスクマネジメント、樹木医倫理の分野で日本の第一人者として知られる。植栽や庭園の施工・維持管理技術、緑化樹木の生産・管理技術、緑の生理・心理的機能、樹木の成長特性などにも造詣が深い。


運転免許センターで木が折れる 走行中や停車中の車 計9台に衝突【熊本】(テレビ熊本 2022/07/27 18:30)


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