無残に剪定された街路樹に異議あり~市民と自治体が対話を通じて共通認識を得られるまで【シリーズ・みどりの現場から】
2022.07.13 コラム

#市民活動 #街路樹 #剪定 #市長への手紙

中川良雄

都市のみどり研究会、東京都庁OB
今日のみどりの姿は私たちが本当に追い求めてきたものだろうか?」

そうした想いをもった、長年都市のみどりをつくり、育てる仕事にたずさわってきた「みどりの技術者」たち。
彼らは「都市のみどり研究会」を立ち上げ、「今求められる都市のみどりの姿」について議論を重ねています。

シリーズ「みどりの現場から」。
本稿では、「都市のみどり研究会」のメンバー、中川良雄さんが、自治体との対話を通して、街路樹剪定のあるべき姿について共通の認識を持てた事例を紹介します。自治体との詳細な書簡のやり取りも公開していただいています。
この事例のように丸坊主にされた並木を見て心を痛めている方は多いはず。何か行動を起こしたいと思っている方にはきっと参考になるはずです。

はじめに

近年、街路樹の枝葉を極限まで切り落とし丸太のような姿にしてしまう行為(剪定?)が各地でみられるようになりました。
街路樹が何のために存在するのか、まったく理解していない行為であり、大切な公共財である街路樹を毀損する行為にほかなりません。

そのような行為が筆者の住む○○市でも起こりました。

このコラムは、無残に毀損された街路樹を見つけ、怒りから市に対し異議申し立てを行い、それに対し市から回答があり、それに対しまた反論する、といった一市民と○○市の対話(往復書簡)の記録です。

そして何度かの対話を重ね、両者が納得できる形に到達することができました。

こうした行為に異議申し立てを行おうとする各地の心ある方々の参考になればと思い、HPで公開することにしました。
(2022年2月15日撮影)樹名版にはわざわざ「花はチューリップに似る」とあるが、強剪定を続け、これまでこの木は開花したことがあるだろうか?
現場の実態を知らず、こうしたプレートを平気で掲げる想像力のなさに怒りを覚える。
2021年11月撮影
編集部注:中川氏と自治体との対話は「市長への手紙(市政ポスト)」により行われました。

○○市「市長への手紙(市政ポスト)」のしくみ
・市長への手紙が「市民の声を聞く課」に届けられ、担当課と市長に報告。
・担当課からの回答が市民と「市民の声を聞く課」に届けられる。

市民と自治体の対話(概要)

対話の詳細は下記からご覧いただけます。

無残に剪定される街路樹に異議あり~市民と自治体が対話を通じて共通認識を得られるまで(対話詳細)【シリーズ・みどりの現場から】


2022年2月15日 自宅前のユリノキ街路樹が幹だけにされる状況を見つける。

① 2月25日 「市長への手紙 1」
・2月15日、ユリノキの街路樹が幹を残すだけに毀損されている姿を発見した。
・○○市の基本構想に掲げる「やすらぎ」や「都市環境・景観の保全」は、こうした姿と矛盾しないか?
・樹木は一度毀損すると、元の美しい姿に戻すには3~5年かかる。市は今後どうしていくのか?

② 3月15日 「市からの回答」
・令和元年ムクドリ対策で今回と同様の剪定をしたが、その後の生育に問題がなかったことから今回も実施した。
・今回の剪定は都市環境の保全上配慮が足りなかった。
・今後都市環境の保全・景観形成に配慮し、枝をある程度残す剪定を実施したい。

③ 3月22日「市長への手紙 2」
・ムクドリ被害で多くの自治体が苦労していることは知っている。
だからといって全本数丸太にすることは街路樹行政の敗北ではないのか?
・丸太状にして問題無かったというのは事実誤認。枯れた個体があった。
これは以前からみられるように夏に強剪定した結果、樹木を弱らせ続けた結果である。
・市の基本方針を具現化するため、今後どう管理していくのか?
具体的に市の考えるユリノキの目標像と、それに至る管理(剪定と維持管理)を示してほしい。

④ 3月31日「市からの再回答」
・枯れた木があったのは事実。夏の強剪定が樹木にダメージを与えてしまった。
今後は樹木の生育サイクルを考慮し、剪定に適した時期に作業を実施する。
・今後は具体的に高さや葉張りを決めて、職員立ち会いのもと作業をして、緑の保全、景観形成に配慮した管理を実施していく。
・以上の対策が継続的になるよう、課内で情報共有していく。

⑤ 4月14日「市長への手紙 3」
・これまでのやりとりで明らかになった市の是正措置について、是非そのように実施していただきたい。
・その上で、毀損したユリノキを、この是正措置に基づき、長期的にどうのように回復・育成していくのか?
目標とする樹形(樹高・枝幅)の設定と管理方針、現在の樹形から目標樹形に育成する実施計画を示してほしい。

⑥ 4月26日「市からの再再回答」
・目標樹形 樹高=12m、枝幅=6m 自然樹形に相似した樹形
・実施計画 
(1年目)
発生した小枝から将来延ばす枝を決めて、それ以外を除去する。
枝の生育が遅い場合はそのまま経過観察する。(作業は令和5年1~2月)。
(2年目:令和5年度)
原則、剪定は行わず経過観察する。
残す枝を見極め枝数を絞り、枝の伸長量より剪定樹形を決める。
(3年目:令和6年度)
目標樹形を保つように冬期に剪定を実施する。
その後も適切な街路樹の維持管理に努める。

⑦ 5月9日「市長への手紙 4」
・市回答へのお礼

おわりに

○○市は今後数年かけてユリノキの街路樹を目標樹形に育成すると約束してくれました。

美しい緑豊かなユリノキの並木が育つのを楽しみに見守るつもりです。
2022年6月28日現在のユリノキ街路樹

対話の詳細は下記からご覧いただけます。

無残に剪定される街路樹に異議あり~市民と自治体が対話を通じて共通認識を得られるまで(対話詳細)【シリーズ・みどりの現場から】


中川良雄(なかがわ よしお)

都市のみどり研究会、東京都庁OB 

造園職として長年東京都で公園や街路樹等の整備や管理に従事。
携わった仕事は「お台場海浜公園」、「城南島海浜公園」、「大泉中央公園」等の計画・設計。町田・多摩市都道の路線毎の街路樹目標樹形計画。
中杉通りのケヤキ再生計画等。
退職後、「都市のみどり研究会」に入会。

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