【庭園探訪】瑞泉寺庭園
2024.01.05 コラム
STAGE編集部

瑞泉寺(ずいせんじ)庭園(神奈川県鎌倉市二階堂) 2023年12月探訪。

国指定名勝(1971年指定)。

夢窓疎石が瑞泉寺境内に作った庭園。

夢窓疎石(鎌倉時代末~室町時代初)は臨済宗の禅僧で、後醍醐天皇などから国師号を賜与されたことから「夢窓国師」の名でも呼ばれます。
石立僧(作庭を得意とする僧侶)としても高名で、日本の庭園史上、禅庭・枯山水の作庭家として最も重要な人物として知られます。
世界遺産および国の特別名勝に登録されている天龍寺庭園(京都市右京区)や西芳寺庭園(京都市西京区)をはじめ、多くの名園を作庭し、現存している庭園はほとんどが国指定名勝に指定されています。

中でも瑞泉寺庭園は夢窓疎石が手掛けた初期の庭園であり、鎌倉に残る鎌倉時代の唯一の庭園として貴重です。
また、庭園南側にはもともと方丈・書院があり、書院庭園(書院の前庭として作られた庭園)の起源ともなった庭園と考えられています。

庭園の意匠は、凝灰質砂岩(鎌倉石)の岩盤を穿ち削って作り出されており極めて独特です。
庭園北側の岸壁を削って作られた天女洞(別名・水月観道場)は坐禅修行の場となっていました。
天女洞の前は岩盤を穿って池(「貯清池」)を掘り、中央は岩盤を残して池に浮かぶ島にしました。
池の東端には滝。滝の上には貯水槽を作って必要に応じて滝に水を流していたようです。


庭園東北側の池の橋を渡り岸壁を削り出した狭くて急な園路を上がった山頂(非公開)には「徧界一覧亭」(へんかいいちらんてい)が建立され、往時には鎌倉五山の僧達が集って歌会が開かれたといいます。
この「徧界一覧亭」からは、庭園とその先に広がる壮大な景色(富士山、相模湾、伊豆半島など)を眺望することができたようです。

現在の庭園の姿は、時代を経て土砂に埋まり荒廃してしまっていた境内を昭和44~45年に発掘・復元したものです。
瑞泉寺庭園。庭園西側から撮影。
鎌倉石の岸壁を削って作られた天女洞。
僧達が集って歌会を開催したという「徧界一覧亭」へはこの急峻な園路を上がっていきます。
境内設置のパネルサインから庭園と「徧界一覧亭」の位置関係。山(「錦屏山」きんぺいざん)の中腹を削り出して作った庭園であることが良く分かります。
来訪時はちょうど夕暮れ時。西日が岩肌に反射する効果も計算ずくの作庭と思われる。
庭園入り口。庭園に入ると突然視界が開ける。

参考

・文化遺産オンライン(文化庁)

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