【街路樹事故】倒木事故のあった道路で危険木2本伐採(熊本県熊本市)
2022.05.17 ブログ
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倒木の恐れ 2本伐採 熊本市「産業道路」の街路樹 4月の事故受け市が全域を点検「梅雨前に安全確保」

熊本日日新聞2022年05月13日


5月12日、熊本市は空洞の見つかった街路樹を伐採しました。
今回伐採されたのは2本で、産業道路に植えられている幹周90㎝と180㎝、樹高15mのチハラザクラ。

市は、4月27日に産業道路で発生した倒木事故を受け、市内約1万3600本の街路樹を緊急点検していました。

【街路樹事故】チハラザクラ倒伏 乗用車を直撃(熊本県熊本市)

一般社団法人 地域緑花技術普及協会

【街路樹事故】チハラザクラ倒伏 乗用車を直撃(熊本県熊本市)


今回の報道によれば、倒木の原因は、地下の根張りが不十分で風雨に耐えきれなかったためだといいます。

市は、引き続き目視や打診などで街路樹の点検を進め、風雨が強まる日が増える梅雨入り前までに問題が見つかった街路樹は伐採するとしています。

樹木の点検について、熊本市では3年に1回程度の街路樹の剪定時に倒木の危険性の有無を確認しているとのこと。
今回伐採された木は2020年9月に剪定されていたそうです。

この剪定時の確認のほか、市では週に数回の道路保全パトロールで車上で樹木を目視しているといいますが、すべての街路樹の危険性をリアルタイムで把握するのは難しいと説明しています。

熊本市では現在、街路樹の再生計画を策定中(*)。
ただし、倒木の恐れがある街路樹は再生計画とは切り離して伐採を進め、道路の安全を確保していくと市は説明しています。

街路樹の再生計画:熊本市が2021年秋から開始予定だった「街路樹再生計画」のこと。街路樹の課題を解決して潤いと安らぎのある街路樹空間を創出するとして、街路樹の大量伐採が予定されていましたが、多くの反対意見が寄せられたことで事業が中断した。現在は仕切り直しで再生計画の内容を再検討している。

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4月27日に倒れた街路樹(チハラザクラ)


街路樹の事故に詳しい細野哲央氏(農学博士、樹木医)のコメント

倒木の原因は事故当時は市が調査中とのことでしたが、ここにきて地下の根張りが不十分で風雨に耐えきれなかったという結論が出たようです。

この路線では剪定が9月に行われていたということですので、まだ葉から光合成産物が転流していない時期に落ち葉対策で剪定されていた可能性があります。
こうした不適期の剪定は樹木を弱らせ、根の発達も抑制します。
また、グーグルマップを見ると、桜の植えられている植え枡が狭く、そもそも根が伸びられる範囲が限定的であることが分かりました。

このような原因で、倒木した樹木は根がしっかりと張れていなかったと推測されます。

また、倒れたサクラは車道側に重心が極端に偏っている樹形でした。

前日からの降雨で、植え桝内の土壌がゆるみ、枝葉についている多量の雨滴で地上部が重くなったサクラが重心のある車道側へ根鉢ごと回転して倒れた(「根返り」倒木)、という事故発生のメカニズムだと思います。

不適期の剪定や樹形、植え桝の狭さが事故の間接的な原因ですので、市には街路樹の管理や植栽環境の見直しが求められます。

樹木の安全点検については、熊本市では車上からの道路パトロールと剪定時の確認で行っているということでした。

市も言っているように、一般的に行われている車上からの道路パトロールでは、これから倒れそうな街路樹を発見するというのはまず無理です。

また、剪定時に倒木の危険性の確認をしていたということですが、これも剪定作業中に樹木に足をかけたら根鉢ごとグラつくくらいの状態になっていれば別ですが、基本的には点検としての効果は期待できません。
包括的な管理委託などでもなければ剪定しながら点検もするような余裕のある仕事はできませんし、そもそも剪定のスキルと点検のスキルは別物です。

結局、熊本市ではこれまできちんと街路樹を点検して倒木などのリスク評価をする仕組みがなかったということです。
県庁所在地で、しかも政令指定都市がこのような状況であったことには驚きを隠せません。

繰り返し倒木事故を起こさないために、今後は街路樹や公園木などの公共の樹木を点検してしっかりとリスク評価する仕組みを作ることが求められます。

細野哲央
細野哲央
 一般社団法人地域緑花技術普及協会 代表理事
 樹木医 博士(農学) 国立大学法人 千葉大学 客員研究員

 樹木のリスクマネジメント、樹木医倫理の分野で日本の第一人者として知られる。植栽や庭園の施工・維持管理技術、緑化樹木の生産・管理技術、緑の生理・心理的機能、樹木の成長特性などにも造詣が深い。

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